03


「リサ! 早く早く!」

料理の載ったトレイを片手に早足で甲板へ向かうERRORが私を振り返って笑う。それに頷いて私も足を急がせれば、ERRORは興奮した様子で私の横に並んだ。

「久しぶりだよね! まさかこの船でシャンクス達に会える事になるなんて思わなかった!」
「そうだね、一応は敵船だから会えないかもって思ってたけど……」

うんざりした顔のマルコさんが、シャンクス率いる赤髪海賊団は不定期にこの船にやって来ては飲んだくれて帰って行くんだって教えてくれた。互いに戦闘の意思は無いし、上等のお酒を持ってきてくれるからオヤジさんが受け入れてしまうんだって項垂れていた。
マルコさんがあんなに嫌そうにしていたのは、会うたびにシャンクスがマルコさんを勧誘するっていうのと、シャンクスの所のクルーにとんでもない人がいる、って理由があるからなんだってサッチさんが言っていた。
それを聞いてしまうと可哀想だと思うけど、やっぱりシャンクス達に会えるのは嬉しい。
甲板に近づくにつれて、外から賑やかな声が聞こえてくる。ERRORは我慢出来ないって叫んで走って行っちゃった。

「リサも早く!!」
「はいはい、落とさないでね」

どんどん小さくなるERRORの背中を見つめながら、シャンクス達の事を思い浮かべてみる。何年ぶりだろう。ERRORが十一歳の頃に別れたきりだから、もう五年も経つんだ。思っていた以上に長い間会ってないんだなぁ。
開かれたままの扉からシャンクスらしい声が聞こえてきた。

「さすが俺の娘だ!!」

一拍置いて、皆の叫び声が轟いてくる。
シャンクスってば、変わらないなぁなんて思いながら足を進めた。頬が緩んでしまうのは仕方がない。懐かしい声にほんのちょっとだけ泣きそうになってしまったのも、仕方ないと言い訳をして扉を潜って外に出た。

「シャンクスってば、相変わらずだねー」

甲板のど真ん中で皆に囲まれながらERRORがシャンクスに抱き付いているのが見えた。シャンクスは右腕でしっかりとERRORを抱きしめながらニコニコ笑っている。懐かしい笑顔に自然と頬が緩んだ。

「赤髪! テメェ何でリサとERRORを知ってんだよい! 娘ってどういう事だ!? あァ!?」
「いつまでERRORにくっついてんだよ! とっとと離れろ!」

マルコさんがシャンクスに詰め寄り、エース君がシャンクスからERRORを引き剥がした。ERRORは突然の事に目を丸くしてるし、シャンクスもきょとんと目を丸くしていた。それから何かを悟ったようにすぐにニヤニヤ笑い出した。

「あぁ、そりゃしょうがねぇよ。俺とリサとERRORは仲良しだからな! なぁ、ベック!」
「お頭、あまり煽ってくれるな。面倒事は御免だぞ」
「お頭! 仲良しなのはアンタだけじゃねェだろ! ほれ、ERROR! こっち来いこっち!」

少し離れた所に座ってるヤソップさんがERRORに手招きをすると、ERRORは「ヤソップのおっちゃん!」て顔を輝かせて走って行った。エース君が少しだけ顔を曇らせたのが見えたけど、今のERRORには見えなかったみたいだ。

ERROR、ちゃんと説明してからじゃなきゃダメだよ」

扉の所に立ち止まっていた私は、オヤジさんの所に料理を運んでからシャンクス達の所に向かった。

「昔、ERRORが生まれる少し前にシャボンディ諸島に行ったんですけど、そこでレイさん……えと、シルバーズ・レイリー……で分かりますよね? 彼の所でお世話になってたんです。その時にコーティングを依頼しにきたシャンクス達と仲良くなって……」
「え、リサちゃん達、冥王の所にいたの!?」

目を丸くするサッチさんの問いに頷いてからシャンクスを振り返ると、シャンクスはとびっきりの笑顔で両腕を広げた。

「ハハッ、リサ! お前、全然変わんねェなぁ!」
「シャンクスこそ。元気だった?」

「久しぶり」って言いながらシャンクスに抱き付くと、シャンクスは痛いくらい強く抱きしめながら「会いたかった」なんて嬉しい事を言いながら顔を近づけてきた。誰かの悲鳴のようなものが聞こえる中、私は条件反射で自分とシャンクスとの間に掌を挟み込む。

「チッ」
「私も会いたかった。ベンさんも皆も久しぶり」

諦めて顔を離したシャンクスの腕に包まれながらベンさん達に挨拶をすれば、皆も口々に「元気だったか!?」「ホント久しぶりだなァ!」なんて返してくれる。温かくて、優しい人達。ERRORはベンさんとヤソップさんの隣で楽しそうに笑いながらお酒を飲んでる。

「あー……リサちゃん? ERRORちゃんが赤髪の娘ってのは……?」

躊躇いがちにサッチさんが尋ねてくる。そう言えば、まだ答えてなかったんだ。

「嘘ですよ」
「へ? 嘘?」
「嘘です。ERRORの父親はシャンクスじゃありませんよ」

微笑んで言えば、サッチさんは何処かホッとした顔で額の汗を拭った。

「何だ、まだ俺と結婚する気ねェのか?」
「うん、無いかな」

シャンクスの言葉に笑って返せば、シャンクスは唇を尖らせたけどすぐに気を取り直したように笑って私の肩を叩いた。

「よし、飲むぞ!!」

手を引かれてベンさん達の所に連れて行かれる。皆と久しぶりに会えるのは本当に嬉しいし、楽しい。五年ぶりに会った皆は記憶の中の皆よりほんの少しだけ老けていて、けどその温かい笑顔は変わっていなかった。

「会いたかったよ」

もう一度繰り返せば、皆はとびきりの笑顔を返してくれた。