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最近、ルーシーに会えていない。スネイプは不機嫌だった。
クィディッチの練習に加えて、ここ最近はずっとジェームズたちと共にどこかに行ってしまっているらしい。悪戯を企んでいるのかと思ったが、目立った悪戯を仕掛けることもない。彼らを警戒した管理人のフィルチが、目を血走らせながら城中を歩き回っているのを何度も目撃した。

「ルーシーは何て言ってるの?」
「『ごめん、言えない』だと」

ふん。鼻を鳴らせば、隣を歩くレイが苦笑して肩を竦める。

「きっと、とんでもないこと企んでるのよ」
「だろうな。ポッターたちと連んで何やってるんだか……」

自分たちが何をしているのか、彼らは誰にも悟らせていない。リリーにでさえ何も話していないというのだから、やはり相当なことに首を突っ込んでしまったのだろう。昨日廊下で会ったリリーが不満を漏らしていたのを思い出して、スネイプは溜息をついた。

「それに、四六時中ブラックと一緒だものね」
「レイ」

ムッと顔を顰めて隣を睨み付ければ、レイは悪びれるどころか楽しげに笑い肩を竦めた。

「良いんじゃない? たまにはセブルスが妬けば」
「はぁ?」
「夏休み中にルーシーに言われたのよ。いつも一緒でずるい、って」
「!!」

目を丸くするスネイプにほんの少しばかり顔を顰めて、レイはつまらなさそうに鼻を鳴らす。

「私から言わせれば、どっちもどっちよ」

大好きなスネイプも、大切な姉も。どちらの一番も自分ではないのだから。
まるで小さな子どもが拗ねているようなその仕草に、スネイプはくつくつと喉を鳴らす。

「馬鹿にしてるの?」
「してないさ。僕もルーシーも、レイのことを大事だと思ってる」
「それはどうも!」

私の望むものとは違いますけどね!
ツンとそっぽを向いたレイが早足で進んでいく。とうとう声を上げて笑ったスネイプは、妹のような彼女を宥めるべく足を早めた。

「ルーピンが怪しいと思う」

防衛術の授業中。こっそり囁けば、隣のレイがチラリとスネイプを盗み見る。

「ルーピン?」
「いつも一緒にいるくせに、たまにアイツだけいない時がある」
「いつでも一緒とは限らないじゃない? それこそ、ルーピンに彼女がいるのかも」
「そんな話、聞いたことあるか?」

シリウスやジェームズほどでなくとも、ルーピンとて女生徒たちの目を引いている。いつでも笑みを絶やさず、穏やかな雰囲気の彼に想いを寄せる女生徒たちは決して少なくない。

「そう言えば、レイブンクローの子がフラれたって泣いてるのを見たわね」
「ルーピンが理由なら、アイツ等が必死に隠そうとする理由も分かる」

ルーシーがスネイプとの時間を削ってまでそちらに専念する理由も。
というか、そうであって欲しいというのが正直な思いだ。親友とも言える彼らだからこそ、自分との時間を削るのだとそう思いたい。どうでもいいことで時間を削られてるなどと思いたくはない。

「調べるの?」
「一人でも退学に出来れば万々歳だ」

ニヤリと口元を歪めたスネイプに、レイも肩を竦めて。

「確かに、グリフィンドールにばかりでかい顔をされるのは気に入らないわね」
「手伝ってくれるのか?」

驚くスネイプにレイはあっさり頷く。

「セブルスこそ、ルーシーに嫌われちゃうかもしれないわよ?」
「まさか」

自信満々に口端を上げて、スネイプは教科書へと視線を落とす。
何の気もなしにパラパラと教科書を捲っていると、隣からくすくす笑う声が聞こえてきた。

「何だ?」
「別に」
「自分こそ、ルーシーに嫌われたらどうするんだ?」
「あら、平気よ。あの子、私のこと大好きだもの」

自信たっぷりに腕を組むレイの言うことは事実だ。たとえレイが犯罪に手を染めたとしても、ルーシーはレイを好きだと言うだろうことは容易に想像出来る。
仲のいい姉妹であることは素晴らしいとは思うが、自分とルーシーの間に障害が出来るとしたら、それは間違いなくレイであることは間違いなくて。

「………はぁ」

無意識に溜息を零したスネイプにレイが勝ち誇ったように笑う。
机に広げられた教科書の中では、満月の夜に変身する闇の生き物が遠吠えを上げていた。